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知らない老夫婦が、電車の座席に揺られている。いいでしょう、これから海へ行くんです。老女は心底幸福気に、左手の薬指を撫でた。良い旅になるといいですね、と私は言って、次の駅で降りた。遺影を抱いたその老女の、喪服姿が忘れられない。 #男女心中道行電車100字書き出し
ごとごとと揺られながら、彼女は変に明るいテンションで僕を質問攻めにした。「お魚は美味しいかな。海は綺麗かな」なんでそんなに楽しそうなの、と僕は尋ねる。ふふ、と彼女は笑う。「だって、帰りのことを気にしないでいい旅行なんて、初めてなんだもの」
#男女心中道行電車100字書き出し
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ってハッシュタグだが、これが結構面白い。書く人が学生なのか、社会人なのか、それによって世界観がまるで違ってくるのだ。
自分でも書いてみようと思うのだが、文才がない。だからこんなことになったんだよね、と笑って、僕らは人生最期の電車を降りた。
「この列車が本日の終電となります」

 なに上手いこと言ってやがる。

「次のXXを出ますと、この列車は終点まで止まりません」

 なに上手いこと繰り返してやがる。

「XX駅で起こりました人身事故の影響で――」

 なに先越してやがる。

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長かった、本当にそう思う。
キミが学生結婚したのが大学二年生の夏だったから、もう七年と八ヶ月になるワケだ。
アレからこの業種を志して、そしてやっとキミが毎朝使う沿線の運転手として配属されたんだからね。

ああ――長かった。

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