米津玄師「烏」は、2026年6月に配信リリースされた最新シングルで、NHKの「2026年サッカーテーマ」として書き下ろされた楽曲である。英題は「Karasu – Raven」。2026年FIFAワールドカップへ向かう日本代表のキャンペーンとも接続する一曲で、ジャケットアートワークは米津自身が手がけている。作詞・作曲・歌唱を担うのはもちろん米津玄師。YouTubeで公開された映像では、歌詞の字幕を通じて、少年期の記憶、夢、喪失、そしてそれでも前へ進む意志が、サッカーという競技の持つ孤独な闘争性と重なっていく。
この曲は、単なる応援歌ではない。少年漫画から学んだ「誰かを守る」という純粋な衝動が、大人になるにつれて血の匂いと後悔を帯びていく、その痛みまで鳴らしている。古いゲームボーイのカセット、携帯に残った空の写真、かつて公園だった空き地。そうしたディテールが、失われた時間を鮮烈に呼び戻す。
だが米津は、感傷に沈まない。「誰かのために生きること」を知りながら、「誰かのためだけに生まれたわけではない」と歌う。その矛盾を抱えて飛ぶ存在としての“烏”は、不吉な鳥ではなく、泥を浴びても青空へ向かう者の象徴だ。空席へ紙吹雪が舞い、声を遮断した場所で、それでも夢を抱いた一羽の烏になる。「烏」は、勝利の高揚よりも、敗北や喪失を知ったあとにまだ走り出す人間のための、米津玄師らしい深いアンセムである。
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